人間国宝 森口邦彦:富澤輝実子|わらくあんみずもちsince1941 富山
〈人間国宝 森口邦彦〉
人間国宝・森口邦彦先生に作品への思いをインタビュー。
着物に命を吹き込む
富澤輝実子(以下富澤) 先生のデザインはこれまでになかった斬新なもので、芸術性の高さが特徴と思います。作品をお作りになるとき、アイディアはどのように湧いてくるのですか?
森口邦彦(以下森口) そやね、私には芯のところに女性に対するピュアな憧れのようなものがありまして、その神秘性をもっと美しく高めてほしいという思いがエネルギーとなってデザインが生まれます。大学で日本画を学んだ後、20代でフランスに渡り、本気でグラフィックデザインの勉強をしました。当時のフランスではオプティカルアート(錯視的幾何学絵画表現)が注目される時期で、強く刺激を受けました。バルテュス(世界的巨匠)をはじめ多くの画家や文化人との知己も得ました。若者らしい進路への悩みもありましたが、バルテュスさんの「日本の友禅の道を途絶えさせてはいけない、それが君の責務だ」というアドバイスに従って、帰国後父の工房に入りました。
富澤 お父様と作風は異なりますね。
森口 父と同じにはできませんでしたね。父は写実の筆力が優れているばかりでなく絵が自由闊達で技量が並外れているのです。ですから、工房で父の後をそのまま継ぐということは到底不可能でした。ですが父は「あんたの好きなものやりなはれ」と励ましてくれました。それで、自分の頭の中にあるものをコンパスや定規を使ってデザインに起こし始めたのです。幾何学模様を作ったのですが、それまでにない模様ですから着物になるのか不安もありました。人まねは嫌ですからたった一人で新たな創作の道を歩かせてもらいました。創造の世界が楽しい、作ることが楽しいと感じながら進みましたね。
着る価値のある着物を作りたい
富澤 お父様は、着物を一枚のキャンバスに見立てて描くだけでなく、「着たときの姿が大切」とおっしゃっていらしたそうですね。
森口 そこが本質ですね。着るものを作っているわけですから、衣桁に掛けてどんなに図案が良かったとしても、着てみたらあまり良くないというのでは意味がありません。私もそこには注意していて、平面で書き起こしたデザインを必ず筒に巻いて、着たときに模様がどう見えるかを確認しています。
富澤 蒔き糊の力を感じるときはありますか?
森口 グラフィックなデザインをきものにする場合、図案に立体感がないとつまらないものになります。立体感を出すために蒔き糊は偉大な力をもたらしてくれます。ですから、線で構成するデザインだけでなく蒔き糊の質や形にも細心の注意を払います。父が用いていたころのものと現在私が使っているものとは、蒔き糊の質はだいぶ違います。糊をただ蒔いているわけではなく、緻密なバランスを考えながらあるべきところに蒔かれているように、ピンセットを使って細かく調整するのです。
作品への想い
富澤 一作ごとに作品への想いは異なりますか?
森口 もちろん一作一作に心を込めますが、何パーセントかは叶えられても想いのすべてが叶えられることはありません。その思いを次作に持ち越します。着物に新しい命を吹き込みたい気持ちが強くありますね。日本には新たなデザインを着物として完成に導くための高度な手仕事の力が健在ですし、個人の芸術表現を発揮できる分野でもありますから、次の未知なる可能性に挑戦するクリエーティブな後進を育てたい気持ちもあります。いつか見た模様をまねるのではなく、そこから新しいものを作り出してほしい。50年先も100年先も着物が着物として生き生きとしているために必要です。
富澤 着る方へのメッセージをいただけますか?
森口 作り手は今を生きる女性の着姿を思い描きながら作りますから、ただ単にノスタルジックに着物を着るのではなく、現代にふさわしい着る価値のある着物を着てほしいと思います。着物は芸術をまとう衣服です。ビジュアルにきれいなことは必要ですが、この着物が好き、あるいは着たいという心情が着姿に現れます。ご自分がより高まる良い作品と巡り会って自信をもって着ていただきたいですね。
〈森口邦彦プロフィール〉
1941年(昭和16年)京都市生まれ
1963年(昭和38年)京都市立美術大学日本画科卒業、フランス政府給費留学生として渡仏
1966年(昭和41年)パリ国立高等装飾美術学校卒業
1967年(昭和42年)父・森口華弘のもとで友禅に従事し始める
2001年(平成13年)紫綬褒章受章
2007年(平成19年)重要無形文化財「友禅」保持者に認定
2009年(平成21年)「森口華弘・邦彦展ー父子人間国宝ー」:滋賀県立近代美術館
2013年(平成25年)旭日中綬章受賞
2016年(平成28年)「森口邦彦-隠された秩序」展:パリ日本文化会館
2020年(令和2年) 「人間国宝 森口邦彦 友禅/デザインー交差する自由へのまなざし」:京都国立近代美術館
2020年(令和2年)文化功労者に選定
2020年(令和2年)フランス共和国 レジオン・ドヌール・コマンドゥール章受章
〈富澤輝実子プロフィール〉
染織・絹文化研究家:富澤輝実子(とみざわ・きみこ)
1951年(昭和26年)新潟県生まれ。婦人画報社入社。『美しいキモノ』編集部で活躍。
副編集長を経て独立、染織・絹文化研究家として活動。誌面「あのときの流行と『美しいキモノ』」連載。
婦人画報社:現ハースト婦人画報社https://www.hearst.co.jp/
美しい着物編集部での活動
昭和48年:婦人画報社(現ハースト婦人画報社)入社、美しいキモノ編集部に配属。
入社した頃はまだまだ着物業界華やかなりし時代で、毎号超一流のカメラマンが超一流の女優さんをモデルに最高の着物姿を撮影してくださいました。
この時代は、貸しスタジオがさほどありませんから、ご自分でスタジオを構えているカメラマンのところに伺いました。
最も多く行ったのは麻布霞町(現在の元麻布)にあった秋山庄太郎先生のスタジオでした。
「本格派のきもの」というテーマでは大女優、名女優が毎号お二人出てくださいました。
当時の編集長がページの担当で私たち新人はアイロンかけのために同行。
当時のバックナンバーを見てみると、岡田茉莉子さん、十朱幸代さん、小山明子さん、星由里子さん、佐久間良子さん、三田佳子さん、司葉子さん、有馬稲子さん、岸恵子さんなど錚々たる方々です。
取材
産地取材:明石縮、伊勢崎銘仙、越後上布、江戸小紋、大島紬、小千谷縮、加賀友禅、京友禅、久留米絣、作州絣、塩沢紬、仙台平、秩父銘仙、東京友禅、西陣織、博多帯、結城紬、米沢織物など各地に。
人物取材:「森光子のきものでようこそ」の連載。森光子さんが毎号おひとりずつゲストを迎えて着物姿で対談をしていただくページで、浅丘ルリ子さん、池内淳子さん、千玄室大宗匠、中井貴一さん、人間国宝の花柳壽楽さん、東山紀之さんなど華やかなゲスト。
海外活動
娘時代から続けてきた茶の湯の稽古が思いがけず役に立つときがやってきました。
海外における「ジャパニーズ・カルチャー・デモンストレーション」のアシスト。
バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、ベラルーシ、ロシア・サンクトペテルブルク
日本文化の普及活動のお手伝いをしています。
講師として
大学や専門学校で「日本の染織」「着物現代史」「世界の民族衣装」の授業を担当。
NHKカルチャーでは「着物の基本」をレクチャー。
早稲田大学の「早稲田のきもの学」の講師。
〈会社案内〉
水持産業株式会社
https://www.warakuan.jp/
〒933-0804富山県高岡市問屋町20番地
TEL:0120-25-3306
理念:世の為、人の為、共に働く仲間の幸福と成長のために
目標:着物で笑顔がいっぱいに、地域に愛される会社・最大売上最小経費を実践し、次世代(みらい)へ繋ぐ
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