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【着物の知識】色無地の魅力:色の奥深さを楽しめる「色無地」・和の色名

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色の奥深さを楽しめる「色無地」

先日、「赤い振袖ありますか?」とのご要望で、赤い振袖をお出ししたところ、お嬢様が「そういう赤じゃない」とおっしゃられて、出したり引っ込めたり並べたり……いろいろとワラワラとした結果、そのお嬢様の欲しかったのは、赤というよりはむしろ臙脂(えんじ)に近いような渋い赤だったのでした。そりゃあそうですよね。「赤」とひと言で言っても、赤の中にもいろいろな色があります。

そして、例えば、同じ染料で染め上げたとしてもその日の温度、湿度、天候、季節、釜、職人によって色は違ってくると言います。プロですから安定的に同じ色を出すのですが、それでも同じ色というのは、もしかすると存在しないのではないか? などと哲学的なことまで考えてみちゃったりして……。

そんななか、ピンク、ブルー、レッド、グリーン、イエローなどの色を表す単語ですが、その昔、テレビでレンジャーものが流行り、その最初は多分単純に「ゴレンジャー」だったと思うのですが、その後、「○○レンジャー」はさまざまに発展、工夫をされましたね。オマケに月に代わってお仕置きをする皆様は、学校で先生に叱られてしまいそうなヘアの色だったりします。なので、日本の子どもたちは、このあたりの色については、相当幼い頃から英語で言うことができるという……、思わぬ欧米化(?)をもたらしました。たどたどしい口調で「デッド(レッド)」とか言ってる幼児はかわいらしいですよね〜。

そんなことを言いながら、ふと「色無地」の色について考えました。日本の伝統色。日本は、いや、日本人は、四季の移ろいの中にさまざまな美を見いだしてきました。古来より日々の暮らしの中にはさまざまな色があり、それらを歌に詠んだり、衣裳に写したりしてきたのです。なんと感性豊か、情緒豊かな民族なのだろうと、ちょっぴり誇らしく、また日本に生まれたことが、とってもうれしくなる瞬間です。

そして、フォーマルからカジュアルまで、コーディネートによって幅広く着用を楽しむことができ、場合によっては正式な儀式に出ることもできる「色無地」は、好きな色、似合う色を、暖色系と、寒色系で一色ずつ持つことで、なんだかとっても心豊かな人生をおくることができるような気がしたのです。色ってすてきだな〜〜。

さらに言えば、平安時代の自由で伸びやかで感性豊かな女性たちが生み出した襲(かさね)の色目は、なかなか外国の方に説明するのが難しい世界観かもしれませんが、山紫水明、百花繚乱……自然との調和。そしてちょっぴり難しい侘び寂びの世界観にも、確かに日本の色は存在するのですね。コーディネートにそんな世界観を取り入れることができたら、誰にも気づいてもらえなかったとしても着用の喜びは倍増しそうです。

和の色名

日本の色に付けられた、日本の名前のなんと感性豊かなことでしょう。特に草木染めの多かった日本では、色の名前が草花の名前そのものになっているコトが多いように感じます。そのせいでしょうか、色の名前だけで季節感を感じることができますし、情景までが思い浮かびます。

桜色

例えば桜色。

桜色に 衣は深く染めて着む 花の散りなむ のちの形見に
(古今和歌集)

という歌が有名です。

衣は桜色に深く染めて着よう。桜が散ってしまった後に思い出すよすがに……。と紀有朋が詠んだ歌ですが、桜に対する愛情を感じるだけでなく、「桜色」というとっても薄い色を深く染めると言うところに深い思いと情緒を感じさせてくれる歌だと思います。

桜を歌った歌には、衣が出てくるものが多く、古くからこの色と共に桜が愛されていたことがよく分かります。とはいえ、万葉集には桜よりも圧倒的に梅のほうが多く歌われてはいるのですが……。

桃色

似た色に、桃色があります。
桃はまさに中国では不思議な力を持った実で、孫悟空の中でも有名ですよね。その桃の花から色をとった「桃染め」は、なんと『日本書紀』の中にも出てきます。かつてはあまり位の高い人の衣裳ではなかったようですので、意外と桃の木は多かったのかもしれませんし、染めやすい染料だったのかもしれないですね。

紅梅色、唐棣色(はねずいろ)など、古来愛されている色ですが、いずれも花の色から名前をとりました。

もちろん、色無地は、色だけでなく紋意匠縮緬地の地紋もいろいろと言いたいところですが、そこは今回は置いといて〜

暖色系の色無地としては、

山吹色

源氏物語にも登場しますし、平安時代から色の名前として使われています。大判小判のことをその色が黄金色に似ていることから「山吹の花」と隠語にして呼ぶ時代劇なんかご覧になったことありませんか〜?(笑)
明るく金運が上がりそうな色ですね。

薔薇色

すてきな人生を「薔薇色の人生」なんていいますね〜。外国の花と思われがちですが、実は、古今集にも歌われていて、主に鑑賞用だったようです。色名として使われるようになったのは明治時代以降ですので、やはり、どど〜っと外国文化が入ってきた頃ということになるのでしょう。

萱草色(かんぞういろ)

明るく黄みがかったオレンジ色で、やっぱり花の色から名付けられました。
源氏物語の中では、なぜか服喪中に着る色だったようで、こんなに明るい色を服喪中に着用するというあたり、調べてみるといろいろ面白そうです。

寒色系の色無地としては、

杜若色(かきつばたいろ)

菖蒲色(しょうぶいろ)は、「あやめいろ」とも読みます。品のいい紫色で、それよりも少し赤みの強い紫が杜若色。この色の違いを別の名前で呼ぶ国は日本だけかもしれません。万葉集にも歌われていますが、その時代は「かきつはた」と濁らずに発音していました。美人を形容するときに使われる言葉でもありました。

青竹色

必ずしも寒色系というわけではありませんが、竹は日本に古くから自生していて、その成長の早さなどまだまだいろいろなことが謎ではありますが、松竹梅の一つでもあり、生命力、そして成長力とともに、強風にもしなやかに寄り添って折れないことなどが好まれます。青竹色はくすんだ青みの緑色ですが、若竹色、老竹色(おいたけいろ)、煤竹色(すすだけいろ)なども。

蒲色(かばいろ)

カバといえば動物園にいるものだと思っていた幼い頃。ま、それはいいとして、川や浅瀬に生えるガマですね。昔は切り傷などに使われる薬だったとか。因幡の白ウサギがくるまったのはガマだったという説があります。

まぁ、この色のお話し、枚挙にいとまがないのでまた改めて、なんどかお伝えしていきたいと思いますが、色の名前からいにしえの昔に思いをはせてみたり、色に込めた思いやいわれを身にまとうというのは、日本人ならではの極上のおしゃれだとうれしく思うわけです。

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「きものレンタルわらくあん」スタッフY(50代 女性)
幼少期から着物に親しんで育った大の着物好き。情に厚く涙もろい。
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