〈卒園式・入学式の着物〉
初めてお子さまを小学校に入学させるご家族は、大きな喜びと小さな不安を感じておられることでしょう。ここでは、入学式の日に恥をかくことなく、しかも周りから「素敵なママ」と思っていただけるお母さまの装いと、その直前にある卒園式の装いをご紹介します。
卒園式・入学式の装い小さな歴史
かつては黒羽織が流行
昭和30年代後半から50年代くらいまで、入学式の付き添いのお母さまに圧倒的な人気を誇ったのが「黒羽織」でした。
黒地に絵羽模様が染めや刺繍で表現された羽織です。
明治時代から略礼装に用いられていた「黒紋付羽織」とは異なるものです。
東京のキリスト教系有名私立小学校でさえもほとんどのお母さまが「黒羽織」姿で入学式に出席していました。
それは制服のようだったといいます。下に着ていた着物は「小紋か色無地」で、帯は「普段着の帯」でした。
その上に黒羽織を重ねれば格調高い式服の装いとなったのです。
黒羽織流行のわけ
●式服にふさわしい着物や帯を持っていなくとも、黒羽織さえあれば式服にふさわしい装いになれたため。
●ほぼ普段着のきものや帯の式服としての不備を覆い隠してくれたため。
●黒地に華やかな染めや刺繍の絵羽模様が若いお母さまの落ち着きのある素敵な姿を作ったため。
紋ありなしの違い
紋付黒羽織と紋無し黒羽織は着用場面は同じです。
本来は紋を付けるべきなのですが、黒絵羽羽織全盛の頃は、とにかく生産が間に合わないほどでしたから、紋を付ける時間的余裕が無かったことも紋無しで黒絵羽羽織を着た理由でしょう。
とにかく年産100万枚というのですから、現在では夢のような数量です。その100万枚にすべて家紋を入れるとしたら、大変な手間がと日時が必要だったことでしょう。
ですから、紋のあるなしにかかわらず入園卒園、入学修業式に出席するお母様方の制服のように着用されていたのです。
それ以外では、田の学校行事(例えば授業参観、学園祭など)のほか、地域の行事や神社仏閣の行事、各家庭のお祝い行事などに着用されていました。
まだ、一般の主婦層が染めのきものを多くは持たない時代でしたから、つつましやかな家庭婦人の装いがすぐにセミフォーマルの式服に変身できる、大変お役立ちのアイテムだったのです。
当時の黒羽織
どのような羽織だったかといいますと、模様はおめでたい吉祥柄から通常の草花柄、モダンな割り付け模様までさまざまでした。
技法は染めがほとんどでしたが、刺繡もありました。通常の絹糸だけでなく漆糸を用いた通好みのものもあり、種類は豊富でした。
現在の装い
昭和50年代頃から、訪問着が一般的となり、花嫁のワードローブに訪問着は必須のアイテムとなってきました。
ですから、お嫁入りのときに着物を持って来た方は、大抵訪問着をお持ちだったのです。
そして、祝賀のシーンでは「ほぼ万能の着物」として活用されていきます。
ただ、入学式をはじめとする学校行事(保護者参観日や学芸会、文化祭など)にはもう少し簡略な装いの、御召や地味目の小紋などを着ていました。
そして現在では、首都圏と地方で多少の違いは見られますし、各地・各家でそれぞれ異なってはいますので、周りの方にお聞きして装いを決めることが安心です。
首都圏ではおおむね訪問着、附下、色無地、江戸小紋などが用いられています。
公立でも私立でもだいたい同様に見受けられます。
好ましい模様・色と帯合わせ
〈訪問着・附下の場合〉
1. 草花風景模様:一種類だけの花模様よりも牡丹や桜、梅、菊など様々なお花が染められた、上品な印象のもの。
2. おめでたい模様:宝尽しや松竹梅、正倉院文様や有職文様などの格調高く優美で品の良いもの。
〈色無地の色目〉
1. お好みで選んで大丈夫ですが、クリーム系、桜色系、ローズ系、藤色系を選んでおくと、品が良くて落ち着きもある素敵なママの姿になりそうです。
2. 濃い地色をお好きな方は、えんじや牡丹色、青紫や紺色、モスグリーンなどもありますが、その場合は、帯に薄色地で華やかなものを選ぶとくっきりと個性的な装いになります。
〈江戸小紋の柄〉
小紋三役(鮫小紋、通し小紋、行儀小紋)は間違いなく正調で上品な柄です。
●鮫小紋:錐彫りの小さな粒が「半円状に連なっている柄で、鮫の皮に似ているもの
●通し小紋:錐彫りの小さな粒が「上下左右にまっすぐ連なっている柄
●行儀小紋:錐彫りの小さな粒が「斜めにまっすぐ連なっている柄」
〈帯合わせ〉
菱文様、亀甲・蜀江などの割付(わりつけ)文様、扇面や地紙文様、光琳水や波文様、
その他古典的な文様の袋帯。
〈帯〆、帯上などの小物合わせ〉
お好みで合わせてよろしいのですが、お嬢さま時代の振袖用やきらきらとしたものは避けたほうが安全です。
〈富澤輝実子プロフィール〉
染織・絹文化研究家:富澤輝実子(とみざわ・きみこ)
1951年(昭和26年)新潟県生まれ。婦人画報社入社。『美しいキモノ』編集部で活躍。
副編集長を経て独立、染織・絹文化研究家として活動。誌面「あのときの流行と『美しいキモノ』」連載。
婦人画報社:現ハースト婦人画報社https://www.hearst.co.jp/
美しい着物編集部での活動
昭和48年:婦人画報社(現ハースト婦人画報社)入社、美しいキモノ編集部に配属。
入社した頃はまだまだ着物業界華やかなりし時代で、毎号超一流のカメラマンが超一流の女優さんをモデルに最高の着物姿を撮影してくださいました。
この時代は、貸しスタジオがさほどありませんから、ご自分でスタジオを構えているカメラマンのところに伺いました。
最も多く行ったのは麻布霞町(現在の元麻布)にあった秋山庄太郎先生のスタジオでした。
「本格派のきもの」というテーマでは大女優、名女優が毎号お二人出てくださいました。
当時の編集長がページの担当で私たち新人はアイロンかけのために同行。
当時のバックナンバーを見てみると、岡田茉莉子さん、十朱幸代さん、小山明子さん、星由里子さん、佐久間良子さん、三田佳子さん、司葉子さん、有馬稲子さん、岸恵子さんなど錚々たる方々です。
取材
産地取材:明石縮、伊勢崎銘仙、越後上布、江戸小紋、大島紬、小千谷縮、加賀友禅、京友禅、久留米絣、作州絣、塩沢紬、仙台平、秩父銘仙、東京友禅、西陣織、博多帯、結城紬、米沢織物など各地に。
人物取材:「森光子のきものでようこそ」の連載。森光子さんが毎号おひとりずつゲストを迎えて着物姿で対談をしていただくページで、浅丘ルリ子さん、池内淳子さん、千玄室大宗匠、中井貴一さん、人間国宝の花柳壽楽さん、東山紀之さんなど華やかなゲスト。
海外活動
娘時代から続けてきた茶の湯の稽古が思いがけず役に立つときがやってきました。
海外における「ジャパニーズ・カルチャー・デモンストレーション」のアシスト。
バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、ベラルーシ、ロシア・サンクトペテルブルク
日本文化の普及活動のお手伝いをしています。
講師として
大学や専門学校で「日本の染織」「着物現代史」「世界の民族衣装」の授業を担当。
NHKカルチャーでは「着物の基本」をレクチャー。
早稲田大学の「早稲田のきもの学」の講師。
〈会社案内〉
水持産業株式会社
https://www.warakuan.jp/
〒933-0804富山県高岡市問屋町20番地
TEL:0120-25-3306
理念:世の為、人の為、共に働く仲間の幸福と成長のために
目標:着物で笑顔がいっぱいに、地域に愛される会社・最大売上最小経費を実践し、次世代(みらい)へ繋ぐ
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