【アレコレ細野美也子】着物コーデ:8月② 東レ洗える附下|みずもち|富山県
創り手の高い技術から生み出される“個性”は説明不要、圧倒的な美しさとして記憶に残る夏のコーディネート。
〈着物〉
絽の秋草模様で日本の美意識を装う夏附下。
温暖化で異常なほどの気温と暑さが年々常態化して、7月、8月が盛夏と思ってしまいますが、二十四節気でいえばすでに8月7日が立秋。
私たちがお盆の前後からなんとなく秋を意識するようになるのは、二十四節気で暮らしてきた日本人独自の感覚なのでしょう。
現実の暑さとは別な、私たちのDNAに刷り込まれている暦といえます。
着物の柄でも、7月中だとちょっと早いなと感じるのに、8月になると秋草、虫の柄がしっくりくるようになります。
虫に季節の情緒を感じてリアルな具象柄として衣服に描くーー蜻蛉や蟋蟀に小さな感動をおぼえる私たちの文化。
これは着物ならではの美意識であり、価値観といえます。
この美意識は当然ながら、各国で違います。
先年、理事として所属するKICCA(きものカラーコーディネーネーター協会)の勉強会でお招きした河上繁樹先生(関西学院大学教授で日本と中国の染織と服飾史を研究)が、国による美意識の違いをお話したときに
「日本の美意識は秋草に象徴される」と解説してくださったことがありました。
これは日本美術史の大家・源豊宗が論文で発表したものを踏まえた、西洋と中国と日本の美術的特徴を捉えた説です。
興味深いのでちょっとご紹介すると、西洋は「ヴィーナス」、中国は「龍」、日本は「秋草」がそれぞれの美意識として象徴されるといいます。
西洋は「ヴィーナス」に象徴される客観的なリアリズムと官能美、裸体を通しての人間表現。
中国は「龍」に象徴される精神的、超越的な人間としての理想の実現。
そして日本は-主観的、情緒的な和やかさと、うつろいという時間軸に対する哀感が特徴で、その美意識を象徴するものが「秋草」だという論です。
夏が終わり、風に揺れる秋草もやがて朽ち、冬を迎えるといううつろい。
なるほどと思い当たるのは、平安時代から続く朽木紋様は虫に食われて朽ちた木を文様化した図案であり、虫喰いの葉も情緒を感じる図案としていまでもよく使われます。
今は、永遠ではなく過ぎゆくのだという捉え方ですが、海外では理解しにくい紋様といえます。
秋草から長い説明になってしまいましたが、着物や屏風で秋草の図案が多い理由が、なんとなく理解できたのではないかと思います。
日本の美意識の象徴を、ぜひ8月の絽で。
着物初心者の方が気軽に着られる附下。着物上級者の方が満足する完成度。
きものサロンみずもちセレクト附下。
〈帯〉
単衣八寸名古屋帯 染織伝統工芸士三田清治 藍組帯三軸組織。
青のグラデーションが美しい、まさに技術が創り上げた逸品です。
正倉院の組紐を帯で再現するという試みで約50年前に開発された織機で、現在世界に2台しかない大型環状織機で製作されます。
大きな特徴は、“組み”の技術が用いられており、とにかく締めやすいしなやかさがあり、シワになりにくい特性をもっているということ。
円形の織機にものすごい量の経糸が設置されます。
これは組紐を組むときの、丸の組紐台のイメージにちょっと近いかもしれません。
円形の巨大な組紐台といえます。
通常の織機はタテ・ヨコの2方向の糸が直角に交わり織り込まれていきますが、この大型環状織機は、タテ・斜め、斜めと、3方向で交わり織り込まれているので、バイアスの力にも柔軟でしなやかという特性を生み出しています。
そして特筆すべきはこのデザイン。
シンプルなグラデーションですが、思い切りのよい濃く深い群青色から始めたセンスは称賛ものです。
〈コーディネート〉
夏らしさと、秋の気配を同調させた8月ならではのコーディネート。
穏やかな秋草模様に、夏らしい印象的な深い青の帯を合わせることで、“正統派の個性”を狙いました。
個性というと、モダン、現代的、近未来的、アーティスティックなどのワードが想起されます。
しかし、伝統的な柄の着物と正統派の帯―この、タイプのまったく違うものを思い切りよく合わせることで生まれる、一種の化学反応を楽しむコーディネートです。
それが一味違った“正統派の個性”。
一歩違うとチグハグになりそうですが、上質な品はしっかりしたパフォーマンスを見せてくれます。
もしポリエステルだから上質ではないという考え方をお持ちの方がいるなら、そこはアップロードしてください。
着心地と機能と本物の染めの技術を用いた東レシルックは、上質な素材として認識してよい次元にきています。
そして青のグラデーションの帯は絶対褒められる、目立つ正統派な個性です。
夏附下 東レシルック洗える着物 111-0158
単衣八寸名古屋帯 染織伝統工芸士三田清治 藍組帯三軸組織 120-0005
夏帯上:江戸組紐 五嶋紐 絽 鈍緑 313-0213
夏帯〆:京都和装小物 衿秀 組紐 ドット 白×白 312-0418
きものサロンみずもち:https://warakuan.shop-pro.jp/
〈コーディネーター〉
コーディネート・文:細野美也子様(月刊アレコレ)
https://www.arecole.com/
Instagram:@arecole.miyakohosono
〈会社案内〉
水持産業株式会社
https://www.warakuan.jp/
〒933-0804富山県高岡市問屋町20番地
TEL:0120-25-3306
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