そもそも振袖に合わせる帯ってどんな帯?
お客様からなんと、後ろ姿の写真と一緒にお礼のお手紙が送られてきました。とてもすてきな一日になったという、感動の体験談と一緒に、正面は恥ずかしいから後ろ姿で〜って書いてあったのですが、なんだか後ろ姿もとても美しくて……(もちろん正面を向いたらさらにお美しいんだと思います)振袖の帯は、あらゆる着物のなかで、最も美しくてすてきな帯かもしれないな〜なんて、今さらながらちょっぴりそう思った次第です。
帯は、長い長い歴史があります。時代をう〜〜んとさかのぼると……「紐」……笑。そうなんです。日本の着物の移り変わりの中で、ボタンやファスナーというのが一度も出てこないんですよ〜。日本人がボタンだのファスナーだのと出会うのは明治時代のお洋服が初! なんて新鮮で新しいのでしょう。着物は、直線裁ちの直線縫いでボタンなし!ファスナーなし! なので、もっぱら身体の前で合わせて、何か紐状の物ではだけないように留めたのが始まり。
でも、日本人はオシャレですね。だんだんと帯の幅が広くなり、小袖の頃には男の人が今締めている幅の2〜3寸の幅の帯に、そして4寸に……とどんどんおしゃれに、幅広くなっていきました。フォーマル帯の最たるものは「丸帯」と呼ばれる物で、皆さんが、振袖姿の写真を見たときの、帯の幅の約4倍の幅。高い天井から吹き抜けにド〜ンと掲げたら豪華タペストリーに見えそうです。
その後、その半分の幅の袋帯というのが開発されました。織っている段階から袋状に(わっかに)なっているタイプは本袋帯と申しますが、今現在、皆さんが目にすることが多いのは単純に「袋帯」で、表地とは違う、無地っぽいものが裏に縫い合わされているので、両端に縫い目があります。
振袖の帯の選び方
振袖は未婚女性の第一礼装で、最高ランクの装いになりますので、「袋帯」を合わせます。振袖の色の調子と帯の色の調子を合わせておく、メインの色を揃えておくなどすると合わせやすそうです。そして、一般的に既婚女性が第一礼装、準礼装などで締める袋帯は、二重太鼓と呼ばれる結び方をするのが一般的ですが、振袖の場合は蝶の形や牡丹の形など華やかで立体的な結び方をします。したがって、まずは色の調子を揃えましょう。
フォーマルですので、金糸、銀糸の入ったキラキラしたものが基本となります。錦織、経錦、唐織、刺繍、紹巴、金襴、螺鈿、引箔、佐賀錦……など、さまざまな技法の帯があり、どれも豪華で華やかなものばかり。一般的には振袖をお選びになる際に、振袖を決めてから帯を合わせるのが普通ですが、ごくまれに、先に帯をお決めになっているという方がいらっしゃいます。とてもオシャレな方だなぁと思います。
お洋服で出かけるとき、最後にネックレスやイヤリング、ピアスを決めるのが普通ですが、ヨーロッパの貴婦人の方は先にジュエリーをお決めになって、それからドレスを選んだり、中にはジュエリーを購入した後にドレスを誂える方がいると聞いたことがあります。帯を先にお決めになった方がいらしたときにふとヨーロッパの貴婦人のエピソードを思い出しました。
帯も金、銀以外の色がいくつか入っていると思います。振袖の上に重ねて置いてみて、違和感のないものを選びますが、金銀がベースの袋帯の中からお選びいただく限り、特にルールはありません。感性や好みでお選びいただいて大丈夫なんです。でも、もしも完璧な装いを求めるのであれば、時代考証を合わせるとか、格を合わせるとか、そういう着物の通が好むような合わせ方や、日本文化に造詣の深い方にも自慢できるような合わせ方というのがあります。
例えば、帯に現代的な薔薇やチョウチョが描かれていたとして、それを古典調の振袖に合わせると、時として違和感を感じることがあります。振袖に限らず、訪問着であっても同様ですが、例えば振袖や訪問着が琳派の写しなのに、帯が遠州椿となると、なんだか妙に落ち着かないような気がするのです。気にならない人もいるでしょうし、気づかない人もいるかもしれませんが、琳派も遠州もなんだか知らなくても感性として違和感を感じるタイプもあれば、よくよく分かっていて「おかしい」とハッキリおっしゃる方もいるでしょう。
振袖の帯結び 着付けのワンポイント
基本的に振袖に金銀ベースの袋帯を締めていれば笑われることはありませんが、完璧な装いにしたいという方は、実際に羽織ってみたり、合わせてみたりしながらお店の人の意見を聞いてみると良いかもしれません。
振袖は、先に書いたように、二重太鼓ではなくて、華やかな締め方をすることが多く、背中にも表情が出ます。帯を曲げたりつまんだり、畳んだり、ひねったり、ゴムで縛ってギャザーをとったりと、普通の二重太鼓よりも酷使しますので、引き箔や螺鈿、佐賀錦など、折れに弱いタイプの帯は控えたほうが良いかもしれませんね。
あと、振袖をお召しになって長時間……そうですね、例えばクラシックコンサートへ行かれるとか、歌舞伎鑑賞に行かれるという場合には、着つけをなさる方にあらかじめ伝えると良いと思います。あまり大きく立体的な帯結びにしてしまうと、背もたれから相当離れて座らなければならなくなり、長時間座っているのがとても大変になってしまうかもしれません。あ、ちょっと椅子の前のほうに座って、さらに髪型をあまり高く結い上げると後ろの席の方がお芝居やコンサートを観るのにご迷惑をかけてしまうかもしれませんのでついでに書いておきますね。
話を戻して、お出掛け先によってはお太鼓のアレンジ……、例えば「ふくら雀」など、比較的ぺたんこな結び方で、背もたれに若干もたれても帯が崩れたり潰れたりしない結び方がありますので、着つけをなさる方とよく相談してみてください。
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